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『異国の丘と本当の気持ち』

宗清裕之


ロンドンの中心からほんの少し北寄り、地下鉄のチョーク・ファーム駅の近くに、プリム・ローズヒルという公園があります。緑の芝生がいっぱいに拡がった広大な敷地の中央が丘状になっていて、その丘の上に立つとロンドンの町並みが一望の下に見渡せるという、素晴らしい場所です。7月の半ばのある日、僕達は近くのスタジオを抜け出して、その丘の上にいました。夜も9時をまわっているというのに、まだ空はほの明るくて、西の方を見れば見事な夕焼けが流れ雲を染めています。昼間の強烈な暑さは嘘のように、冷たく澄んだ空気があたりを包む、典型的な夏のロンドンの夕べ。突然、空の低いところを大きなジェット機が飛んで行くのが間近に見えました。あと一週間もすれば、日本へ帰るんだなぁ…。イギリスで過ごしたレコーディング生活も終わりに近付いた、ある日のひとコマ。その時、メンバーの胸に去来したものは恐らく、満ち足りた充足感と少しばかりの虚脱感のようなものだった、そんな気がします。


FOUR SEASONSはザ・イエローモンキーにとって、今までで最も精神的に解放された状態で制作されたアルバムです。例えば木立の緑の美しさにただ訳もなく感動したり、空の青さに何故か胸がときめいたり、部屋の窓から眺める雨模様にメランコリックな気分にさせられたり、そんなまる裸で繊細な感情が、レコーディング期間中メンバーの気持ちを支配していました。それは、単純にイギリスという異国の地にいたからとかそんな短絡的な理由からだけではなくて、BUNCHED BIRTH(ザ・イエローモンキーのインディーズ・デビュー盤)以来多くの経験と学習を積み、試行錯誤も重ねたうえで、バンドがあらためて辿りついた必然の境地だったような気がしてなりません。心が音楽を生む、なんて口にしてしまえば安っぽくなってしまいそうな言いまわしですが、でも本当にそれが、FOUR SEASONSの根幹にあるものなのです。だからこのアルバムは、音楽の純粋な感動と、迷いのない強力な創作衝動に満ち溢れています。そして、この作品を創ったことを通して彼らが得たものが、これからのザ・イエローモンキーをもっと素晴らしいステップへと導いてくれると僕は確信
しています。何よりも今日、このFOR SEASON TOURのステージを見た皆さんこそが、自らの目でそのことを確認していただけたのではないでしょうか?


FOUR SEASONSのCDジャケットの表紙をめくった最初のページにうつる、あのプリム・ローズヒルの写真。それを見ながら僕はほのかな感傷にひたりつつも、新たな年へむけてのザ・イエローモンキーのさらに大きな姿を思い描いている今日この頃です。

2 years ago

October 13, 2009